「アンチクライスト」のネタバレ

「アンチクライスト」のネタバレ

「アンチクライスト」は、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などで知られるラース・フォン・トリアー監督により制作された2009年の映画です。同年のカンヌ国際映画祭で上映され、大変な物議を醸した映画なので、なんとなく覚えている方、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。激しい暴力シーンと性交シーン満載のこの映画は、日本での公開は無理だろうと言われたほど。まさに「世紀の問題作」と言える映画です。映画の製作背景には、監督・脚本を務めたラース・フォン・トリアーの重いうつ病との戦いがあります。トリアー監督はうつ病の治療に2年の歳月を費やし、復帰後はじめて撮った作品が本作だったのです。そのためか、この映画には要所要所に心の病に苦しむ人の苦しい心情がこれでもかと描かれています。見終わったあとは非常に重たい気持ちになりますので、心して観るようにしてください。

キャスト

  • 夫・・・ウィレム・デフォー
  • 妻・・・シャルロット・ゲンズブール

スタッフ

  • 監督・脚本・・・ラース・フォン・トリアー
  • 製作・・・ミタ・ルイーズ・フォルデイガー
  • 製作総指揮・・・ペーター・ガルデ、ピーター・アールベーク・ジェンセン
  • 音楽・・・クリスチャン・エイネス・アンダーソン
  • 撮影・・・アンソニー・ドッド・マントル
  • 編集・・・アサ・モスベルグ、アナス・レフン
  • 製作会社・・・Zentropa

ストーリー(ネタバレ)

プロローグ
ある雪の降る夜、夫と妻が愛し合っていた。彼らは快楽に溺れるあまり、隣の部屋の窓が開きっぱなしになっていることに気がつかなかった。そして、その部屋に彼らの幼い息子がいることも。妻が絶頂に達したとき、彼らの息子は固い地面に打ちつけられていた。
第一章:嘆き
息子の葬儀の日、妻は悲しみのあまり気を失って倒れ、入院する。自らの不注意が原因で息子を失ったことへの罪悪感に苛まれる妻は、徐々に精神に異状をきたしていく。カウンセラーである夫は、自らの手でそんな妻を治療しようと試みる。「死にたい」とつぶやく妻に、夫は様々な質問を投げかける。そして妻が一番恐れるものが「エデン」と呼ばれる森であることが分かる。そこはかつて家族で過ごした山小屋のある森だった。夫は妻の「恐怖」を克服するため、「エデン」へ向かうことを決意する。森へ着くと夫は一頭の鹿に遭遇する。鹿は正に子供を産み落とさんとしている最中で、血まみれになっているのだった。
第二章:痛み
森の山小屋「エデン」で妻の治療に専念する夫。しかし妻の容態は一向に回復に向かわない。自然は悪魔の教会だという妻の言うとおり、森では凄惨な出来事が次々とおこる。巣から落ちた鳥の雛は蟻に集られ猛禽に食われ、自らの肉を食らうキツネは「カオスが支配する」と言葉を発する。妻は益々狂ってゆき、性に溺れ始める。大自然の中で、激しく自らを慰める妻。それを夫は止めることもせず、相手をする。妻の歪んだ欲望に、夫はなすすべを無くすのだった。
第三章:絶望
夫は屋根裏部屋で、以前妻が書いていた論文を見つける。そこには魔女狩りや女性迫害に関する文章や絵が描かれていた。突然、窓にカラスがぶつかってくる。そんなとき、息子の検視報告書が夫のもとに届く。そこには妻が息子を虐待していた事実が書かれていた。夫が自分を捨てるのではないかという妄想にとらわれた妻は、彼の足に重い砥石を埋め込み、さらには夫の股間を潰してしまう。
第四章:三人の乞食
妻は「三人の乞食が現れると人は死ぬ」とつぶやく。そして、息子が死んだあの日、窓枠に立つ息子の姿を見ていたにも関わらず、自らの欲望に従ってしまったことを思い出す。狂気に駆られた妻は、はさみで自分の性器を切り取ってしまう。砥石から逃れた夫は、妻の首に手をかける。倒れた妻の傍らには鹿とキツネとカラスが佇んでいるのだった。
エピローグ
山小屋を一人あとにする夫。赤い木の実を見つけ、それを口にする。顔の無い沢山の女達がエデンへの道を駆け上っていく・・・。

各方面での評価

初上映は2009年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門でした。カンヌでの上映では大変な物議を醸し、少なくとも4人の観客が暴力シーンのおぞましさに気絶したそうです。上映後の記者会見でも、監督に対し「この映画を作った自己弁護と釈明をしてください」と記者が発言するなどして険悪なムードになったそうです。同映画祭では主演のシャルロット・ゲンズブールが女優賞を受賞する一方で、審査員団から「世界一の大物映画監督と自称する監督による、女性嫌いの最たる作品」であると非難され、最低賞を受賞する事態となりました。このような背景があるため、日本での公開は絶望的とされていましたが、過激な暴力シーンや性交シーンにぼかしを入れる対応をし、2011年2月に公開されました。アメリカ合衆国では賛否両論の評価で、評論家による支持率は47%、平均点は10点満点中5.4点となりました。監督の出身地であるデンマークでは称賛を得たそうで、北欧理事会映画賞をはじめ、デンマークの主要な映画賞であるロベルト賞では7部門を制す高評価でした。また、デンマーク国内では約8万3000枚のチケットを売上げ、トリアー監督作としては「ドッグヴィル」以来の好成績でした。

受賞

ボディル賞

  • 作品賞・・・ラース・フォン・トリアー
  • 主演男優賞・・・ウィレム・デフォー
  • 主演女優賞・・・シャルロット・ゲンズブール
  • 撮影賞・・・アンソニー・ドッド・マントル
  • 特別賞・・・クリスチャン・エイネス・アンダーソン

ロベルト賞

  • 作品賞・・・ラース・フォン・トリアー
  • 撮影賞・・・アンソニー・ドッド・マントル
  • 編集賞・・・アナス・レフン
  • 監督賞・・・ラース・フォン・トリアー
  • 脚本賞・・・ラース・フォン・トリアー
  • 音響賞・・・クリスチャン・エイネス・アンダーソン
  • 特殊効果賞・・・ピーター・ヒョース、オタ・バーレス

北欧理事会

  • 北欧理事会映画賞

ヨーロッパ映画賞

  • 撮影賞・・・アンソニー・ドッド・マントル

サン・ジョルディ賞

  • 外国女優賞・・・シャルロット・ゲンズブール

カンヌコクサイ映画祭

  • 女優賞・・・シャルロット・ゲンズブール

ヌーシャテル国際ファンタジー映画祭

  • Titra映画賞・・・ラース・フォン・トリアー

感想

とにかく痛い!そして難しい!冒頭5分はモノクロの映像に「私を泣かせてください」が流れ、ハイスピードカメラを駆使したスロー映像で、性行為の最中に子供が転落死してしまうという残酷なシーンなのにも関わらず、とても美しく描かれています。問題はその後からです。森の名前が「エデン」であることからも分かるように、宗教的な要素が強いのですが、映画のタイトルである「アンチクライスト」からもわかるとおり、「妻」が背負っている罪がこれでもかと描かれています。そして繰り返される暴力と情事。ぼかしありとはいえ、その生々しさと苦しさは気絶者が出たと言うのも頷けます。ちなみにYoutubeで検索するとぼかし無しバージョンも見ることができますが、あまりオススメしません。とにかく全編通して不気味で、禍々しさに溢れています。女性は悪魔であるとか、性に対する欲望こそが悪だとか、解釈しようと思えば出来なくもないのでしょうが、喋るキツネとか森の木から出てくる無数の手とか、考えても分からない事柄が多すぎて困ってしまいました。特にラストシーンの顔の無い女性が沢山でてくるところはどういう意味なのかさっぱりわからず・・・。多分、キリスト教に深く関わっている人や勉強しているひとならわかるのでしょうが、私には全く理解できませんでした。私が感じたのはうつ病って大変なんだなという浅い感想だけで、あとは痛い、グロい、エグいの三拍子でソウよりも観ているのがきつかったということしか言えません。観てみたいという方は、心して挑んでください。